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Roger & Me
監督 / 製作 / 脚本:マイケル・ムーア(1989年) 90分
<内容紹介>
ミシガン州フリントは、マイケル・ムーアの生まれ故郷であり、ゼネラル・モーターズ(GM)創設の町でもある。ムーアの一家は、ムーア以外みんなGMで働いていた。実はムーアもGMに入社したのだが、1日も出勤せずに会社をやめたのだった。
ある日、GM社は3万人が働く11の工場を閉鎖することを発表した。時給70セントのメキシコに11の工場を建てるからだ。このニュースを耳にしたムーアは、故郷を救いたいという一心でこの映画の製作にあたった。
GMの会長、ロジャー・スミスをフリントに呼び、失業した人々に会わせるという目的で何度も会長に会おうと試みた。本社に乗り込もうとデトロイトへ向かったが、本社のあるビルは2階以上が個人使用であり、エレベーターで2階以上へ行くことさえできなかった。
ようやくロジャーとの対決の時がやって来た。ムーアは株主を装い、GMの株主総会に紛れ込んだのだ。質疑応答でムーアの番がきた。「フリントの株主、ムーア氏です」との紹介があると、GM側は、閉会の用意をするように指示し、ムーアの質問を聞くまでもなく総会は幕を閉じた。
ムーアの友人、ベンは5年間に5度レイオフされた。今回、またかという恐怖から、工場で精神パニックに陥った。地元の精神病院で療養中である。
保安官代理のロスは、借金を払えない家庭を周り、立ち退きを命じている。立ち退きが後を絶たず、トラックのレンタカーを探すのにも一苦労である。工場がなくなり、職を失って働けない人々は、収入がないために家賃が滞納し、立ち退きを命じられている。
フリントに住むある女性は、月に一度の生活保護を受けているが、家計を支えるためにウサギで商売をしていた。ペット用と食用のウサギを扱っている。また、フリントには血液銀行があり、みんなここに血を売りに来るのだ。人々はこうして収入を得ることで、何とか生活をしているのだった。
相次ぐ工場閉鎖に町の人々の生活はどんどん追い詰められていく。その一方で、何の不自由もなく生活している人がおり、貧富の差は広がるばかりである。毎年恒例の大パーティーがGM創設者の家で開かれた。そこでは、苦境にある住民を飾りの“人間銅像”として雇う、という一場面も見られた。
失業大国となったフリントは、急速に犯罪が増えている。刑務所は超満員で、郡が5階建ての新しい刑務所を建てた。開所日の前夜、市は100ドルで宿泊できると夫婦を招待した。
映画を作った1980年代、GMは3万人をレイオフし、8万人いた従業員は5万人に減少。2003年には、従業員は1万5千人しかいないという。
<一口感想>
DVDには、マイケル・ムーアによる音声解説も付いており、こちらも非常に興味深い内容である。 この映画を買ったのはワーナーであるが、他にもいくつかの会社が名をあげていた。その中でムーアがワーナーを選んだ理由は、買取金額ではなく、上演する劇場の数であった。多くの人に真実を知ってもらいたいというムーアの願いがここにも表れている。“Roger & Me”を買ったワーナーは、映画の中で立ち退きを命じられた人々の2年分の住居費を肩代わりした。また失業者のためにこの映画の無料鑑賞券を25万枚用意するなど、映画の上映以外にもムーアの要求に応えた。世の中には金儲しか考えない企業ばかりではなく、ワーナーのような企業もあることをうれしく思った。(玉野)
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