無料-
出会い-
花-
キャッシング
NHK海外ドキュメンタリー
湾岸戦争症候群 〜何が兵士たちをむしばんだか〜
制作:パウ・テレビ・プロダクション(イギリス 1993年) 45分
<内容紹介>
湾岸戦争帰還兵たちの一連の病状を指すのが「湾岸戦争症候群」である。病状がひどく、働けなくなった者や自殺を図った者もいる。倦怠感や関節痛、皮膚の痛み、記憶の喪失など症状はさまざまであるが、政府はこれを心理的なものであるとしていた。
へスター・アドコーフさんの息子は、湾岸に着いて一週間後、直腸から出血し、それから胸が痛くなり、発疹もでたが、全く診察してもらえなかった。彼は一刻も早く帰国したかったので、自分は健康だと申告し、健康診断を省略した。そのような兵士は後になってから、戦争のせいで病気になったと主張することはできないのだ。
戦場では、様々な化学兵器や生物兵器が使用されることを想定して、それを防ぐ対策がとられた。多くの兵士は、生物兵器に使用されるタンソ菌とボツリヌス菌に対する予防接種を受けた。中には神経ガスの被害を予防する錠剤を与えられた兵士もいる。これらの接種について、兵士は何も知らされていなかった。
試験中の薬を兵士に使用する場合は、インフォームド・コンセント(本人に知らせて同意を得ること)が義務づけられているが、国防総省はその義務の免除をするよう食料医薬品部局に圧力をかけていたことが証言された。
アメリカは、自分たちが主導で制定したニュルン・ベルク原則に反した。ニュルン・ベルク原則とは、第二次大戦中に行われた人体実験への反省から、戦後、インフォームド・コンセントなしに実験的な治療を行うことを禁じたもので、国際法に組み込まれている。
油性の火災で吐き出された有毒ガスや、原油にまみれた環境も兵士たちの健康をむしばんだ。風土病にかかった兵士もいる。血液検査によってベンジンのような、そもそも体内にはあるはずのない物質が検出された兵士もいる。どの物質も石油からできたものであった。
湾岸戦争当時、環境汚染を引き起こしたのはサダム・フセインだと非難されたが、被害の多くは多国籍軍の爆撃が引き起こしたとする科学者もいる。
湾岸戦争症候群のもうひとつの大きな要因と考えられているのが「劣化ウラン」だ。天然ウランから濃縮ウランを作った残りの物質、いわば核産業の廃棄物である。これは非常に硬く、砲弾を強化するのに使われた。これが危険な物質であることは兵士たちに一切知らされていなかった。劣化ウランは、通常の状態なら害はなく、衝撃を受けると有害なチリを撒き散らす。それを吸い込むと、肺や腎臓に傷がついてしまうのだ。
<一口感想>
ベトナム戦争の帰還兵であるビクター・シルベスターさんは、混乱した湾岸帰還兵を支援する会を作った。ベトナム戦争でも、湾岸戦争でも悲劇を体験した人はたくさんいるのに、その悲劇は今もなお続いている。
43日間の戦争でさえ兵士にこれだけの被害が出たのだから、半年も続いたイラク戦争の被害は一体どれほど恐ろしいことになるのだろうか。日本の自衛隊もイラクへ派遣されたが、かつての戦場には危険な物質がまだ残っている可能性があるのだ。(玉野)
[PR]動画